体育館に響くボールの音。アタックが決まった瞬間の歓声。汗を流して笑い合う仲間たち。
そんな光景に憧れて、ママさんバレーを始めたはずでした。
でも今、あなたの心は晴れない。練習が終わっても、安堵よりも疲労感が先に来る。LINEの通知音が鳴るたびに、胸がざわつく。
「また飲み会の誘いだ…断ったら、どう思われるんだろう」
「あの人とあの人、また睨み合ってる。私、どっちの味方につけばいいの?」
「バレーを楽しみたいだけなのに、なんでこんなに気を遣わなきゃいけないの…」
派閥。その見えない境界線が、あなたの居場所を狭くしている。
私が見た「派閥の沼」──ある主婦の失敗談
美紀さん(仮名・42歳)は、子供が小学校に上がったタイミングでママさんバレーチームに入りました。
最初の3ヶ月は本当に楽しかった。体を動かすこと、チームプレーの達成感、久しぶりに感じる「自分の時間」。週2回の練習が、彼女にとってかけがえのない息抜きだったのです。
しかし、4ヶ月目に異変が起きました。
練習後の飲み会で、先輩ママたちが小声で話す内容に気づいてしまったのです。
「〇〇さん、最近態度おかしくない?」
「あの人、いつも△△さんの味方ばっかりするよね」
「ねぇ、美紀さんはどう思う?」
突然、話を振られた美紀さんは、言葉に詰まりました。
「え…私は…その、よく分からないです…」
気まずい沈黙。それから、微妙な空気。
その日を境に、美紀さんはチーム内の「派閥」の存在を意識せざるを得なくなりました。
「どちらの味方でもない」は、「敵」と見なされる
美紀さんは中立を保とうとしました。誰とも深く関わらず、バレーの技術向上だけに集中しようと決めたのです。
でも、現実は甘くなかった。
練習中、Aグループのリーダー格の人が美紀さんに声をかけます。
「ねえ、今度の試合のスタメン、〇〇さんより私の方が良いと思わない?美紀さんもそう思うでしょ?」
美紀さんは曖昧に笑ってやり過ごしました。
すると翌週、今度はBグループの先輩から冷たい態度を取られるようになったのです。
「私、何か悪いことした…?」
LINEグループでは、誰かの発言に対して誰が「いいね」を押したか、誰がスタンプを送ったか、そんな些細なことまでが「どちら側か」の指標になっていました。
飲み会を断れば「付き合いが悪い」と陰口を叩かれ、参加すれば深夜まで愚痴大会に付き合わされる。
美紀さんは、気づけば毎日スマホを握りしめ、LINEの通知に怯えるようになっていました。
「こんなはずじゃなかった…私、ただバレーがしたかっただけなのに」
派閥に疲れるのは、あなたが「悪い」からじゃない
ここで、一度立ち止まりましょう。
あなたが派閥問題に疲れているのは、あなたが「弱い」からでも「コミュニケーション能力が低い」からでもありません。
それは、あなたが「人として真っ当な感覚」を持っているからです。
スポーツは本来、体を動かす喜び、仲間と協力する楽しさ、自分の成長を感じる充実感のためにあるはずです。
なのに、いつの間にか「誰と仲良くするか」「誰を避けるか」「誰の機嫌を取るか」が最優先事項になっている。
これは明らかに、おかしい。
派閥が生まれる構造には、いくつかの要因があります。
- 閉鎖的なコミュニティ: 限られたメンバーで長期間活動するため、力関係が固定化しやすい
- レギュラー争い: 試合に出られる人数が限られているため、実力だけでなく「誰と仲が良いか」が影響する
- 承認欲求の衝突: 「認められたい」「リーダーでいたい」という欲求が、派閥形成を加速させる
そして、最も厄介なのは──
「派閥に入らなければ孤立する」という恐怖が、あなたを縛り付けていること。
派閥は「綱引き」じゃない。あなたは「人間」だ
派閥問題を綱引きに例えるなら、あなたは両側から引っ張られる”綱”になっています。
Aグループが引っ張る。Bグループも引っ張る。
でも、待ってください。
あなたは綱じゃない。人間です。
綱は引っ張られるしかありませんが、人間には「選択する権利」があります。
- どちらかの派閥につくのか
- 中立を貫くのか
- それとも、全く別の道を選ぶのか
そして今、あなたがこの記事を読んでいるということは、心のどこかで「もう限界かもしれない」と感じているはずです。
それは、変化の予兆です。
あなたが選べる「4つの選択肢」──疲れたあなたへの処方箋
ここから、具体的な解決策をお伝えします。
どれか一つを選ぶ必要はありません。複数組み合わせても構いません。大切なのは、あなたが主体的に選ぶことです。
選択肢①:中立を保つ処世術──派閥に巻き込まれない「境界線」の引き方
中立を保つことは、決して「逃げ」ではありません。むしろ、高度な処世術です。
ただし、中途半端な中立は「どっちつかず」と見なされ、かえって孤立を招きます。
中立を貫くための3つの鉄則
1. 「私はバレーを楽しみたいだけ」という軸を明確に持つ
誰かがあなたに愚痴を言ってきたとき、こう返しましょう。
「そうなんだね。でも私、人間関係より技術向上に集中したいんだ。次の練習、一緒にレシーブ練習しない?」
話題を「派閥」から「バレー」に戻すのです。
2. 「共感はするが、同調はしない」を徹底する
「〇〇さん、ひどいよね?」と言われたら──
× 「本当だよね!私もそう思ってた」(同調=派閥入り)
◯ 「大変だったんだね。でも、私はよく分からないから何とも言えないな」(共感だけで終わる)
3. LINEの「いいね」「スタンプ」は戦略的に使う
特定の人だけに反応しない。全員に均等に、あるいは、誰にも反応しない。
「最近LINEあんまり見れてなくて〜」と言い訳を用意しておくのも手です。
中立を保つことのメリット
- 精神的な消耗が減る
- 派閥内の揉め事に巻き込まれにくい
- 長期的に見て、信頼される存在になりやすい
ただし、注意点もあります
中立は「楽な道」ではありません。孤独を感じる瞬間もあるでしょう。
それでも、「自分らしさを失わない」という意味では、最も健全な選択肢の一つです。
選択肢②:バレー技術への一点集中──「上達」という誰にも文句を言わせない武器
派閥問題に巻き込まれる人の多くは、「中途半端な立場」にいます。
でも、もしあなたが圧倒的に上手かったら?
誰も文句を言えなくなります。
技術向上に集中することのメリット
- 「あの人はバレーが上手いから」という評価が、派閥を超える
- 練習中に余計な人間関係を気にする時間が減る
- 自分の成長を実感できるため、ストレス発散になる
具体的な上達法
- YouTube や専門書で独学を強化する
チーム練習だけに頼らず、自宅でできる基礎トレーニング(レシーブの姿勢、ステップワーク)を磨く。 - 個人レッスンを受ける
市や県の体育協会が主催する単発レッスンや、元実業団選手によるパーソナル指導を探す。 - 「技術の話しかしない人」になる
練習後、雑談が始まったら「今日のトスのタイミング、どう思いました?」と技術の話題に持っていく。
注意すべき点
技術が向上しても、嫉妬の対象になる可能性はあります。
ただし、それは「あなたが成長している証拠」でもあります。
他人の嫉妬をコントロールすることはできませんが、自分の成長をコントロールすることはできます。
選択肢③:新規チームの立ち上げ──「理想の環境」は、自分で作れる
これは最も大胆な選択肢ですが、最も根本的な解決策でもあります。
「派閥のないチームを、自分で作る」
実際、ママさんバレー界では、既存チームに嫌気がさしたメンバーが新しいチームを立ち上げるケースは珍しくありません。
新規チーム立ち上げのステップ
ステップ1: 志を同じくする仲間を3人以上集める
「バレーを純粋に楽しみたい」「派閥に疲れた」という共通の価値観を持つ人を探します。
既存チームの中にも、実は同じように疲れている人がいるはずです。個別に声をかけてみましょう。
ステップ2: 市の体育館や公民館の利用枠を確保する
多くの自治体では、団体登録すれば体育館を低価格で借りられます。
ステップ3: チームのルールを明文化する
「派閥禁止」「飲み会は任意参加」「LINEは連絡事項のみ」など、最初にルールを決めておくことで、後々のトラブルを防げます。
ステップ4: SNS や地域掲示板でメンバー募集
「楽しくバレーをしたい人募集」と呼びかければ、同じ思いの人が必ず集まります。
新規チーム立ち上げのメリット
- 自分たちの理想の環境を作れる
- リーダーシップを発揮できる
- 「派閥に耐える」のではなく「新しい価値を生み出す」という前向きな行動
ただし、覚悟も必要です
新規チームの立ち上げは、労力がかかります。場所の確保、メンバー管理、金銭面の調整など、責任も増えます。
それでも、「自分らしくいられる場所」を手に入れる価値は、計り知れません。
選択肢④:練習後の飲み会を断る勇気──「NO」と言える自分になる
実は、派閥問題の多くは「飲み会」で加速します。
アルコールが入ると、愚痴や悪口が止まらなくなる。そして、その場にいたあなたも「同罪」と見なされる。
飲み会を断ることは、派閥から距離を置く第一歩です。
断り方のテンプレート
- 家族を理由にする
「子供の夕飯作らなきゃいけなくて」
「旦那の帰りが遅いから、私が家にいないと」 - 体調を理由にする
「最近疲れやすくて、早く寝たいんだ」
「お酒飲むと次の日に響くようになっちゃって」 - 経済的理由を使う
「今月ちょっとピンチで…」
「子供の塾代が重なっちゃって」
重要なポイント
断るときは、罪悪感を持たないこと。
あなたは、自分の時間と健康を守る権利があります。
最初は気まずいかもしれません。でも、2〜3回断ると、周りも「この人は飲み会には来ない人だ」と認識し、誘われなくなります。
それは孤立ではなく、**「自分の境界線を守った結果」**です。
あなたのスマッシュは、誰のためのものですか?
ここまで読んで、あなたはどう感じましたか?
「やっぱり私、疲れてたんだ」
「こんな状況、おかしいよね」
「でも、本当に変えられるのかな…」
そんな気持ちかもしれません。
最後に、一つだけ質問をさせてください。
あなたがコートに立ち、ボールを打つとき──そのスマッシュは、誰のためのものですか?
派閥のAさんのため?
リーダー格のBさんに認められるため?
それとも、陰口を言われないため?
違いますよね。
あなたのスマッシュは、あなた自身のためのものです。
あなたが気持ちよく体を動かすため。
あなたが達成感を感じるため。
あなたが「今日もバレーできて楽しかった」と思えるため。
派閥に疲れたなら、もう十分頑張りました。
今度は、「自分を守る」ために頑張る番です。
まとめ──疲れたあなたが今日からできること
- 自分の気持ちを認める
「疲れた」と感じているなら、それは正常な反応です。自分を責めないでください。 - 選択肢を知る
中立を保つ、技術に集中する、新チームを作る、飲み会を断る──どれもあなたの権利です。 - 小さな一歩を踏み出す
今日から、たった一つでいい。「飲み会を断る」「技術の本を買う」「信頼できる仲間に相談する」──何でもいいから、行動を起こしてみてください。 - 「バレーは楽しいもの」という原点を思い出す
あなたが最初にバレーを始めた理由は、派閥に入るためではなかったはずです。
あなたは、降りていい。それは「逃げ」じゃない。
もし、どうしても辛いなら──
チームを辞めることも、一つの選択肢です。
「ここまで頑張ったのに、辞めたら負けな気がする」
「周りに何て思われるか…」
そう思うかもしれません。
でも、あなたの心と体は、何よりも大切です。
辞めることは「逃げ」ではありません。
それは、「自分を守る決断」です。
バレーは、人生の全てではありません。
あなたには、家族がいて、友人がいて、他にも楽しめることがたくさんあるはずです。
派閥に疲れたなら、その疲れを認めてあげてください。
そして、あなたが本当に望む「自由」を、取り戻してください。
あなたのバレーは、あなたのものです。
誰かの機嫌を取るためのものでも、派閥を生き抜くためのものでもありません。
今日から、あなたらしいバレーライフを、もう一度始めましょう。